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[連載]進化する 森×人スタイル 第一回「市民の力が森づくりに革命を起こす。」

約40億m3もの幹材積(かんざいせき)を有する日本の人工林。
しかしその木材が売れない。
森林所有者の経営意欲低下、林業就業者の減少、そして山林の荒廃。都市住民の期待する森林の公益的機能は発揮されず、農山村の住民は疲弊している。
負のスパイラルは止められないのか。
市民のパワーとアイデアを原動力とするNPO緑のダム北相模は、この暗雲たる状況に一筋の光を当てている

冬晴れがまぶしい日曜日の朝、相模湖に程近い若柳・嵐山の森のふもとにある集会所は、総勢100人の老若男女で埋め尽くされ活気に満ち溢れていた。
「当会の特徴でもある」という大勢の若者が発する混沌としたエネルギーが、木々の緑と一体となり新鮮だ。
中心で活動前の説明をにこやかに行う石村さんは、NPO緑のダム北相模の事務局長であり、産みの親でもある。

地球の空気清浄機を救いたい

「妙に山が静か過ぎるし地肌もむき出しだ。生き物たちの気配が感じられない。」
休日に趣味の山歩きを楽しむ石村さんに、ふとそんな思いがよぎったのは1998年のことだ。
気になって調べてみると、荒廃する日本の森林、減少し続ける世界の森林の深刻な現状があった。
戦後の拡大造林政策によって、各地に造成された人工林。
しかし木材貿易自由化に伴い1960年代以降は安価な輸入材が急増、国内の林業は厳しい立場に追いやられた。
その結果放置された人工林は荒廃し、生物多様性保全、大気の浄化、地球温暖化防止といった公益的機能が損なわれてしまっている。

一度造った人工林は人の手入れなしには成り立たないのだ。
一方で、減り続ける世界の森林から日本は多くの木材を輸入している。
「私は空気清浄機の開発に携わっているのですが、このままでは森林という地球の空気清浄機が壊れてしまう。そう感じたのです。」
危機感をもった石村さんは集まった仲間と、暗中模索の森づくりをスタートさせた。

市民参加の森づくりは新境地へ

この日集まった100人のボランティア集団こそ石村さんの目指したかたち。
彼らは、それぞれの目的に合わせて班をつくり、整然と山へ入っていく。よく整備された森を歩いていると、他の森ではあまり見られないものが登場し驚かされる。
間伐材の加工用工房、養蜂用の巣箱、ムササビの棲む巣箱もある。
これほどバラエティに富んだ森はそうないだろう。
ここ若柳・嵐山の森は環境・社会・経済が調和する森林管理協議会(FSC)認証の森だ。

FSCはドイツに本部を置く国際的な森林認証機関で、環境・経済・社会の3つの側面から森林を評価し、10の原則と56の基準に基づき認証を行う。
認証された森から生産され、厳しい流通管理を経た木材はFSCのロゴが入ったラベルを付加される。
こうして適切に管理された森林とそうでない森林の差別化が図られるというわけだ。
NPO緑のダム北相模がFSC認証を取得したのは2005年のこと。
無理に決まっていると笑われたこともあったが、その理念に哲学を感じ、5カ年計画で取得を目指した。
そして多くの人の支えによって世界的にも珍しく、国内では初という市民団体としての認証取得を果たす。
毎月2回の地道な森林整備活動を続けて8年が経っていた。

「認証を取って大きく変わったのは、仲間うちでの意識の高まり、そして世間の共感と信頼を得られたこと。」
石村さんの寛容な姿勢も手伝い、ボランティアの人数だけでなく取材や見学に来る人も増えた。
現在ではさまざまな団体や地元住民と連携して、FSC認証材の製品化、施業集約化や利用間伐のモデルケースづくり、森林環境教育活動、森の生態系調査活動など数多くのプロジェク
トを進めている。まさに市民参加型森づくりの新境地だ

若者よ、次世代の森林を担う革命家たれ

太陽が傾き始める午後になり、山歩きと材木を運ぶ作業を終えふもとに戻ると、他の班も続々と引き上げてきた。
輪になって本日の成果報告会が始まる。皆森の中でいい汗をかき、充実した表情をしている。
「私たちの班はチェーンソーを使って間伐を行いました。」
「今日は工房にて間伐材のミニベンチを製作しました。」
ここでは若者たちのエネルギーが、かつて荒れ果てていた森の再生を後押ししているのだ。
石村さんは、集まってくる若者たちに、大きな期待と可能性を感じている。
「後世に残せる持続的な森林を構築するためには、革命を起こしてやるというくらいの気持ちが必要。若い人たちには、既存の制度や枠組みに捉われず、森の革命家になるつもりで活動してもらいたい。」
この熱き想いは、次世代の森林を担う、若き革命家の卵たちへと着実に受け継がれていくだろう。
森林・林業の未来は決して暗くない。そう感じさせる躍動感が、ここにはある。(文・佐々木 嵩史)

Action!農工大生現場ルポ

佐々木 崇史本コーナーのライターは、現役農工大生。
東京農工大学において(株)リバネスが行ったライティング研修の受講生たちです。自分の視点で、日本の農林水産業の現場情報を記事にしてお届けします。
東京農工大学
http://www.tuat.ac.jp/
佐々木 崇史(ささき たかし)
東京農工大学農学部地域生態システム学科4 年。
鳥取県出身。
地元山村の林業が衰退する現状に強い危機感を抱いている。
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